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【2026年】購買調達部門向け|取適法改正対応のポイントを解説 

更新日:2026年4月8日

【2026年】購買調達部門向け|取適法改正対応のポイントを解説 

2026年1月1日から下請法が「取適法」に改正され、調達・購買業務に大きな影響が出ています。価格協議の義務化、手形払いの全面禁止など、従来の取引慣行を見直す必要があります。対応を怠ると法令違反となり、勧告や企業名公表のリスクもあるのです。本記事では、改正内容と、今すぐ実施すべき対応のポイントなどを解説します。

2026年1月施行|下請法から取適法への改正

2026年1月1日から、これまで「下請法」と呼ばれていた法律が「取適法(中小受託取引適正化法)」に改正・施行されました(※1)。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といいます。今回の改正は約20年ぶりの大規模なものであり、単なる名称変更ではありません。

中小企業との取引環境を改善し、公正な競争環境をつくることが目的で、

  • 価格協議の義務化

  • 適用範囲の拡大

  • 手形払いの全面禁止

など、従来の取引慣行を大きく見直す必要があります。

対応を怠ると法令違反のリスクがあるため、素早い社内体制の整備が求められています。取適法の基本的な枠組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。本記事を読み進める前に、まず全体像を把握しておくと理解が深まるでしょう。

関連記事:中小受託取引適正化法とは?変更点や実務対応のポイントを解説 

(※1)参考:公正取引委員会「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!」

購買調達担当者が知るべき5つのおもな改正点

2026年1月施行の取適法では、おもな変更点として以下の5つがあげられます。

  • 価格協議の義務化と協議記録の保存義務

  • 手形払いの全面禁止と現金・電子決済への移行

  • 支払期日60日ルールの厳格化

  • 適用範囲の拡大(従業員数基準の導入)

  • 特定運送委託の追加

それぞれの改正ポイントを見ていきましょう。

改正点1:価格協議の義務化と協議記録の保存義務

受託事業者から価格転嫁の要請があった場合、発注側は協議に応じることが法的な義務となりました。これまでも「買いたたき」は禁止されていましたが、今回の改正では「協議に応じない一方的な代金決定」が新たな禁止事項として追加されています。つまり、形式的な対応や一方的な拒否は明確に違反となるのです。

また協議を行った際は、その内容を書面やメールなどで記録し、保存することが実務上必須となります。協議の日時、参加者、協議内容、価格変更の根拠資料などを残しておかないと、後から「協議を適切に行わなかった」と判断されるリスクがあるでしょう。

受託事業者からの価格見直し要請を無視したり、先延ばしする行為は法違反となるため、社内でのフロー整備が急務です。

改正点2:手形払いの全面禁止と現金・電子決済への移行

取適法では、約束手形による支払いが全面的に禁止されました。そのため支払方法を現金払い、または電子決済に切り替える必要があります。あわせて手形払いを取引条件に含めていた企業は、取引先との契約内容を見直し、支払システムの変更対応を早急に進める必要があるでしょう。

また電子記録債権やファクタリングなども、支払期日までに代金相当満額を受け取れないものは禁止されている点には注意しましょう。電子決済への移行には経理システムの改修も必要になる場合があるため、社内の関係部門と連携して計画的に進めることが大切です。

改正点3:支払期日60日ルールの厳格化

給付を受領した日から60日以内に代金を支払うというルールが、より厳格に運用されるようになりました(※2)。この60日の初日は、納入物などの受領日の当日からカウントされます。実務上は「2か月以内」といった運用も可能です。

注意したいのは、仮に取引先と合意があったとしても、60日を超える支払期日の設定は無効となり、60日後が支払期日とみなされる点です。検査の有無にかかわらず、受領日が起算日となるため、検収フローが長い企業は業務プロセスの見直しが必要になります。支払遅延は遅延利息の対象となり、減額も遅延利息の計算対象に追加されました。

(※2)参考:公正取引委員会「中小受託取引適正化法テキスト」

改正点4:適用範囲の拡大(従業員数基準の導入)

今回の法改正では、従来の資本金基準に加えて、従業員数基準が新たに導入されました。これにより、発注元(委託事業者)と発注先(中小受託事業者)の間で従業員数に一定の差がある場合にも、取適法の適用対象となります。

具体的には、取引内容によって基準となる従業員数が異なり、以下の2パターンに分かれます。

300人基準の対象取引: 製造委託、修理委託、プログラム作成の情報成果物作成委託、運送・物品の倉庫保管・情報処理の役務提供委託、特定運送委託

100人基準の対象取引: 上記以外の情報成果物作成委託、上記以外の役務提供委託

資本金基準または従業員基準のどちらか一方を満たせば適用対象となるため、これまで資本金基準では対象外だった取引先が新たに対象となるケースが増える見込みです。

そのため購買調達担当者は、自社と取引先の従業員数の関係を把握し、取引先の従業員数を定期的に確認する仕組みをつくる必要があります。たとえば、発注時の見積依頼書に従業員数の確認欄を設けるといった方法が有効です。

改正点5:特定運送委託の追加

取適法では、発荷主(委託事業者)が自社の事業のために行う物品の運送を、運送事業者に委託する取引(特定運送委託)が新たに対象となりました。たとえば、自社で販売する商品の配送を運送会社に委託するケースや、製造を請け負った製品の納品時に運送を外部委託するケースなどが該当します。運送事業者には個人事業主も含まれます。

自社で運送委託を行っている場合は、その取引が取適法の対象となるかどうかを確認し、必要な対応を進めましょう。

取適法で禁止されるおもな3つの行為

取適法では大きく分けて11項目の禁止行為が定められています(※3)。ここでは購買調達担当者が実務でとくに注意すべき3つのカテゴリーに分けて解説します。

  • 禁止行為1:受領拒否・返品・不当なやり直しの禁止

  • 禁止行為2:減額・買いたたき・協議を適切に行わない代金決定の禁止

  • 禁止行為3:購入・利用強制と不当な経済上の利益提供要請の禁止

順番に見ていきましょう。

(※3)参考:公正取引委員会「委託事業者の禁止行為」

禁止行為1:受領拒否・返品・不当なやり直しの禁止

注文した物品や成果物を、正当な理由なく受け取らない行為は禁止されています。また受領後に返品することも、正当な理由がない限り違反となります。さらに、発注内容の変更や不当なやり直しを求める行為も禁止対象です。

たとえば、

  • 発注時に定めていなかった仕様変更を後から要求

  • 受託事業者に責任がないにもかかわらず作り直しを求める行為

などが該当します。

受領検査などで不合格とする場合は、明確な基準と根拠を示す必要があるでしょう。口頭での指示ではなく、書面やメールで発注内容を明確にしておくと、トラブル防止につながります。

禁止行為2:減額・買いたたき・協議を適切に行わない代金決定の禁止

一方的に代金を減額する行為は、従来から禁止されていましたが、取適法ではより厳格に取り扱われます。通常の対価よりも著しく低い価格で発注する「買いたたき」も同様です。今回の改正で新たに追加されたのが「協議に応じない一方的な代金決定」という禁止事項です。

受託事業者から価格転嫁の要請があった際に、形式的な対応をしたり、根拠を示さずに拒否する行為が該当します。合意書などのフォーマットを整備して、価格変更の根拠資料とともに保存する体制をつくりましょう。

禁止行為3:購入・利用強制と不当な経済上の利益提供要請の禁止

発注側が自社の製品やサービスを購入・利用するよう強制する行為は禁止されています。たとえば、受託事業者に対して「取引を継続したければ当社の製品を購入してほしい」と要求する行為などです。

また、

  • 協賛金

  • 人員派遣

  • 金銭貸付

など、不当な経済上の利益を提供させる行為も違反となるリスクがあります。

受託事業者との関係は対等であることが原則であり、取引の継続を条件に金銭的・人的な負担を求めることは避けなければなりません。社内で慣例となっている取引慣行があれば、それが法令に抵触していないかあらためて確認する必要があります。

また製造委託を行う企業では、受託事業者に金型を無償で保管させている慣行が取適法違反と判断されるリスクがあります。金型保管における具体的なルールや対応方法については、以下の記事をあわせてご確認ください。

関連記事:金型保管の課題とは?違法になるケースや4つのポイントも解説 

購買調達部門が実施すべき5つの対応ポイント

購買調達部門が実施すべき対応のポイントとしては、以下の5つがあげられます。

  • 取引先の該当性チェックと台帳整備

  • 契約書・発注書テンプレートの全面改定

  • 支払条件の見直しと手形廃止

  • 価格協議フローと記録管理体制の整備

  • 社内教育

順番に見ていきましょう。

ポイント1:取引先の該当性チェックと台帳整備

まず、現在取引しているすべての取引先が取適法の対象となるかどうかを確認しましょう。資本金と従業員数の両方をチェックし、どちらか一方でも基準を満たせば対象となります。取引先リストに資本金・従業員数の情報を追加し、該当・非該当の項目を設定しておくと、後々の確認の手間も省けます。

契約書に「従業員数に変更があった場合は速やかに通知する」という条項を盛り込むことも有効でしょう。台帳整備はすべての対応の基礎となるため、最優先で取り組むべき作業です。

なお2026年度末の運用開始が予定されている「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」では、発注側が取引先に求めるセキュリティ対策水準(★3〜★5)を取引条件として提示することが想定されています。取適法対応で取引先台帳を整備するこの機会に、セキュリティ評価の状況もあわせて管理項目に加えておくとよいでしょう。

関連記事:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度とは?基本や導入の背景、おさえたいポイントも解説 

ポイント2:契約書・発注書テンプレートの全面改定

既存の契約書や発注書のテンプレートを取適法に対応した内容に改定します。価格協議に関する条項を明文化し、受託事業者から要請があった場合の対応手順や根拠資料の提示義務を記載しましょう。支払方法からは手形による支払いを削除し、現金払いまたは電子決済への変更を反映させます。

発注時には、仕様、単価、納期、検収の起点、支払方法などの項目を明示しましょう。電磁的方法(メールやシステム)による発注書の交付手順も標準化しておくと、記録管理が効率的になるでしょう。法務部門と連携して、改定後のテンプレートを全社で統一的に使用する体制をつくると安心です。

ポイント3:支払条件の見直しと手形廃止

手形払いを採用している場合は、現金払いまたは電子決済へ切り替える必要があります。支払サイトが60日を超えている取引については、60日以内への短縮も必要です。検収の起点を明確にして、受領日からの日数管理が正確に行えるよう台帳の整合性を確認しましょう。

経理システムや購買システムの改修が必要な場合は、情報システム部門と連携して対応を進めます。支払条件の変更は取引先への影響も大きいため、事前に丁寧な説明を行い、理解を得られればスムーズに進められるでしょう。

ポイント4:価格協議フローと記録管理体制の整備

受託事業者から価格転嫁要請があった際の対応フローを明確にします。協議記録には、

  • 日時

  • 参加者

  • 協議内容

  • 価格変更の根拠資料

などを含めましょう。

メールでのやり取りや議事録を証跡として管理する仕組みも大切です。協議に応じない、または先延ばしにする行為は法違反となるため、受付から回答までの期限を社内ルールとして設定することが望ましいでしょう。価格協議の記録は、監査や公正取引委員会の調査が入った際の重要な証拠となります。

記録はクラウドストレージなどで一元管理し、必要な時にすぐに取り出せる状態にしておくとよいでしょう。

また価格協議の記録管理を仕組みとして運用するには、SRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)の考え方を取り入れることが有効です。SRMの基本概念や導入メリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:SRMとは?必要な理由やメリット、導入時の手順や注意点を解説 

ポイント5:社内教育

取適法への対応は、契約書の改定や支払方法の変更だけでは完結しません。制度改正の趣旨を購買調達担当者全員に浸透させることが大切です。とくに価格協議の対応や発注書の交付は担当者によってばらつきが出やすいため、個人の知識や経験に頼るのではなく、ワークフローに組み込んで仕組みとして機能させることが重要です。

公正取引委員会や中小企業庁が随時公表する運用基準の改訂や、違反事例を定期的に確認して社内ルールを最新の状態にしておけば、今後の法令変化にも柔軟に対応できるでしょう。

最新の調達DXの動向を学ぶ「調達DXカンファレンス」

取適法への対応を進めるにあたり、他社の取り組み事例や最新のDX動向を学ぶことも重要です。株式会社Leaner Technologiesが主催する「調達DXカンファレンス」では、業界のリーディングカンパニーで活躍する実務者や調達DXのトップランナーによるセッションを行なっています。

「調達部門における取適法順守体制の構築」をテーマにしたセッションも実施しているため、社内の購買調達担当者や経理部門の方と一緒に参加することで、組織全体のコンプライアンス意識向上にもつながるでしょう。

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まとめ

2026年1月1日から「下請法」が「取適法(中小受託取引適正化法)」として施行されました。価格協議の義務化・手形払いの全面禁止・60日以内の支払いルールの厳格化など、対応を怠ると法令違反や企業名公表のリスクが伴います。まず取引先の該当性確認・契約書の改定・価格協議フローの整備を優先的に進めることが急務です。

担当者個人の知識に頼らず、仕組みとして社内全体に浸透させることが大切です。

また他社事例や調達DXの最新動向を学びたい方には「調達DXカンファレンス」が役立ちます。実務者によるセッションが収録されており、取適法対応の具体的なヒントが得られるでしょう。

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