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金型保管の課題とは?違法になるケースや4つのポイントも解説 

更新日:2026年4月7日

金型保管の課題とは?違法になるケースや4つのポイントも解説 

2026年1月に改正・施行された取適法により、金型の無償保管は違法となるリスクが高まっています。そのため、購買・調達部門には保管費用の支払いや所有権の明確化、廃棄プロセスの整備など、適正な金型管理が求められています。本記事では、違法となる保管ルール、発生する課題、適切な管理のポイント、システム化のメリットまで、購買担当者が知っておくべき実務知識を解説します。

金型保管は中小受託取引適正化法に適合した方法にする必要がある

発注元の企業(委託事業者)が発注先の企業に金型を預けている場合、長期間発注を行っていないにもかかわらず保管費用を支払わずに保管させ続ける行為は、法律に違反するリスクがあります。

具体的には、2026年1月に改正・施行された「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(中小受託取引適正化法、通称:取適法)の第5条第2項第2号において、「不当な経済上の利益の提供要請」として禁止されています(※1)。

また、公正取引委員会の公表資料では、たとえば発注の見込みがないにもかかわらず無償で金型などを保管させる行為や、発注先から廃棄や引き取りを希望されているのに対応しないケースなどが、違反にあたる行為として示されています(※2)。

そのため、発注元は発注先に金型を保管させる際、保管費用を適切に支払うか、不要な金型は速やかに廃棄するなど、取適法に適合した方法で管理する必要があります。

なお、「そもそも、中小受託取引適正化法について詳しく知らない」という方は、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:中小受託取引適正化法とは?変更点や実務対応のポイントを解説

(※1)参考:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」

(※2)参考:公正取引委員会「2026年1月施行!下請法は取適法へ改正ポイント説明会」

金型保管で発生する3つの課題

金型保管で発生する課題としては、おもに以下の3つがあげられます。

  • 棚卸業務がExcelとメールで終わらない

  • 長期未使用金型の判別ができず保管料リスクが読めない

  • 廃棄の承認プロセスが複雑で意思決定が進まない

順番に見ていきましょう。

課題1:棚卸業務がExcelとメールで終わらない

調達購買部門が金型の棚卸を行う際、サプライヤーへの棚卸依頼や金型の所在確認、金型は使用可能な状態かどうかや、メンテナンスの状況といった確認作業をメールとExcelで管理しているケースが少なくありません。

さらに、調達購買部門と経理部門がそれぞれExcelリストを作成してサプライヤーに送付し、サプライヤーが回答後に「紙の確認書」へ代表印を押して郵送するといった、いわゆるハンコリレーが発生しているケースもあります。

こうした往復作業だけでも数か月を要し、集計する頃には情報が古くなっているため、台帳データと現場の実態が乖離しがちです。クラウド上で最新情報を共有する仕組みがなく、Excelをメールでやり取りしている状態では、調達購買部門の業務負荷は大きくならざるを得ません。

課題2:長期未使用金型の判別ができず保管料リスクが読めない

前述したように、取適法では発注を長期間行っていないにもかかわらず無償で金型などを保管させる行為は違法となるリスクがあり、保管料の支払いが求められます。

しかし、システム上で「最終稼働日」が管理されていないケースでは、どの金型が長期未使用の状態にあるのかを正確に判別することが難しくなります。

資産情報と発注実績が紐づいていない場合、金型の「存在の有無」はわかっても「現在も使われているのか、すでに使われていないのか」を判断できません。

その結果、サプライヤーから請求された保管料をそのまま支払うか、リスクを承知のうえで対応を先送りにするかという判断を迫られ、購買担当者が適正な保管料を見積もれないまま経営層への説明を求められるといった事態にもつながりかねません。


課題3:廃棄の承認プロセスが複雑で意思決定が進まない

サプライヤーから金型を「廃棄したい」という申し出があっても、営業部門・経理部門・OEM客先への確認リレー(メールや社内システム)が複雑になりがちで、回答待ちのまま数か月放置されてしまうケースも珍しくありません。

これは、各部門や役員を含めた関係者全員で廃棄の可否を確認する必要があるため、意思決定に時間がかかりやすい構造になっているからと言えます。

また、サプライヤーからの、

  1. 申請

  2. 社内承認

  3. 客先確認

  4. 許可証発行

  5. 廃棄証明回収

という一連の流れを一気通貫で管理する仕組みが整っていない場合、ワークフローが分断され、手続きが停滞しがちです。その間もサプライヤー側では保管スペースが占有され続け、保管費用も発生し続けることになります。

違法になる金型保管の4つのケース

金型保管で違法となる可能性のある行為について、以下4つのケースがあげられます。

  • 長期間発注がない状態での無償保管

  • 廃棄・引き取り要求への対応拒否

  • 金型の無償保管強要

  • 保管に関する書面での取り決めの欠如

順番に見ていきましょう。

ケース1:長期間発注がない状態での無償保管

ある自動車関連企業では、製造委託終了後も発注予定のない状態で、約700個の金型を約50社の下請先に無償で保管させ続けていました。金型の保管には倉庫代・管理コスト・棚卸し費用などが発生しますが、これらのコストを受注先へ押し付けたとして、公正取引委員会から勧告を受けています。

この行為は、取適法第5条第2項第2号が禁止する「不当な経済上の利益の提供要請」に該当します。同社は最終的に全金型を回収・廃棄し、保管料等として約2,000万円を支払いました。本来、自社資産の保管費用は発注元が負担すべきであり、長期にわたる無償保管は重大な法的リスクを招くことを示す典型的な事例です。

ケース2:廃棄・引き取り要求への対応拒否

発注先が「倉庫が圧迫されている」として引取りや廃棄を求めているにもかかわらず、発注元が対応を先送りする行為は違法となる場合があります。

ある輸送業の事例では、取引期間が長いため預かっているプレス金型が100型以上になり、金型を保管するスペースがない状態で保管費用も支払われていない状況でした。その中には、既に製品の量産が終わってしまい、保管のみしている金型も多く含まれています。この場合も、取適法第5条第2項第2号「不当な経済上の利益の提供要請」に抵触するリスクがあるのです。

ケース3:金型の無償保管強要

発注先が保管する金型について、発注元(委託事業者)が廃棄を制限したり保管を強要する行為も違法となる可能性があります。

公正取引委員会の資料によると「委託事業者は、機械部品の製造を委託している中小受託事業者に対し、中小受託事業者が所有する金型・治具の廃棄には委託事業者の承諾が必要」とする行為が問題視されました(※3)。

たとえば、ある自動車関連企業の事例で、発注先が発注元から金型を自由に処分できないように制約がかけられていたケースがあげられます。

このように、発注元が廃棄や処分を事実上コントロールしている状態は取適法上の違反リスクがあるため、発注元は金型の所有権の所在にかかわらず、保管や廃棄のルールを適切に整備しておく必要があります。

(※3)参考:公正取引委員会「2026年1月施行!下請法は取適法へ改正ポイント説明会」

ケース4:保管に関する書面での取り決めの欠如

金型の保管について、保管料の支払いや保管期間などを契約書や覚書で明確に取り決めていない場合、後にトラブルとなり違法と判断されるリスクがあります。

ある企業の事例では「金型の保管費用が部品代に含まれていると認識していた」といった発言を、明確な協議や契約がなされていなかったとして問題視しました。

たとえ書面上の同意があったとしても、保管料の負担額や算出根拠、保管期間といった条件が明確に協議・合意されていなければ、「発注先の利益を不当に害する」として取適法違反と判断されるおそれがあります。形式的な書面の有無だけでなく、実質的に公正な取り決めがなされているかどうかが問われる点を押さえておきましょう。

金型保管を適切に行うための4つのポイント

金型保管を適切に行うためのポイントとしては、おもに以下の4つがあげられます。

  • 所有権や費用負担を契約書で明確化する

  • 保管費用を部品代とは別に支払う

  • 金型台帳を整備して所在を管理する

  • 不要な金型は積極的に廃棄する

順番に見ていきましょう。

ポイント1:所有権や費用負担を契約書で明確化する

金型保管に関するトラブルを防ぐには、

  • 所有権の所在や修理・更新時の費用負担ルール

  • 保管・返却・廃棄のタイミング

などを契約や注文書の段階で明確にしておく必要があります。

経済産業省が公表している「型取引の適正化推進協議会報告書」の付属資料には「型の取扱いに関する覚書」のひな形が掲載されており、自社内のルール整備に活用できるでしょう(※4)。

この覚書では、

  • 型代金の支払い方法や支払期日

  • 保管費用の負担

  • 貸与期間

  • 返却や廃棄

などを書面化することが推奨されています。

保管・修理・更新などの負担区分を明確に契約書で定義し、廃棄や返却のルールをあらかじめ定めることで、慣行的な「無償保管」から法的にも健全な取引へと転換できます。これらを取り決めておくことで、後の誤解や不信感を防ぎ、長期的な信頼関係を築けるでしょう。

(※4)参考:経済産業省「型管理の適正化に向けたアクションプラン」

ポイント2:保管費用を部品代とは別に支払う

一般社団法人 日本自動車部品工業会の資料によると、量産終了後の金型保管費用について、部品の「管理費の内数として支払い済み」との考えをあらため、コストを見える化して部品取引とは別枠で支払うことが大切だといわれています(※5)。

同資料では、保管費は該当地域の外部倉庫費用の相場を基準に、金型の専有スペース(作業スペースも考慮)や保管方法に応じて査定することも推奨されています。また保管費用は、発注先からの請求の有無にかかわらず、保管期間に応じた支払いが必要です。発注側が発注先の困り事を主体的に問いかけ、保管費用を正しい形で負担する姿勢が求められるでしょう。

(※5)参考:一般社団法人 日本自動車部品工業会「型保管費の適正負担に向けた取組み手順」

ポイント3:金型台帳を整備して所在を管理する

金型管理の適正化では、自社が管理している金型に関する情報を正確に把握するため、すべての金型の情報を集約した台帳(管理表)を作成する取り組みも大切です。金型は自社と委託先の企業を行き来する機会が多く、所在把握が難しくなっているケースもあるためです。

外注やサプライヤーへの金型の貸出先が多くなれば、どの金型をどのサプライヤーに貸し出したかわからなくなる場合もあるため、台帳で管理する重要性が高まります。発注元・発注先双方で確認し、資産台帳に廃棄可否や型保管費の支払い状況の記載を追加することが望ましいでしょう。

たとえば、金型管理システムであるRFタグなどの自動認識技術を活用すれば、金型のリアルタイムな所在管理が実現できるでしょう。

ポイント4:不要な金型は積極的に廃棄する

発注元の企業は、発注先と事前に話し合い、金型の廃棄に関するルールをあらかじめ決めておく必要があります。発注先から廃棄に関する申請・要請・問い合わせがあった場合は、速やかに廃棄の可否を判断し、その結果を書面で通知しましょう。製品の廃番が決まった際は、発注先への情報共有を徹底することが大切です。

発注先も、保管している金型と製品の対応関係を整理し、型台帳の整備や保管場所の見直しを行うことが推奨されています。金型の稼働状況を細かく把握することが大きな負担になる場合は、話し合いのうえで、年度ごとに「保管している金型を使った部品の発注予定があるかどうか」を確認する方法も選択肢のひとつです。

寿命を迎えた金型が廃棄されないまま放置され、限られた保管スペースを圧迫しているケースは少なくありません。不要な金型はまず廃棄を検討することを基本とし、それでも保管を指示するのであれば、指示した側が保管費用を負担するという考え方が重要です。

金型保管をシステムで管理する3つのメリット

上記であげた課題や問題を解消する手段として、金型管理システムの活用も検討すると良いでしょう。金型保管をシステムで管理するメリットは、おもに以下の3点です。

  • リアルタイムでの所在管理と可視化

  • 管理工数の大幅な削減

  • 情報の一元管理と属人化の防止

順番に見ていきましょう。

メリット1:リアルタイムでの所在管理と可視化

金型管理システムには、個体識別番号を割り振ったQRコードやRFID、レーザーマーカーによる刻印などで一つひとつの金型を管理して、所在や使用状況をリアルタイムに記録・追跡できるものがあります。具体的には、ハンディターミナルで受入から払出、使用、検査、メンテナンス、廃棄までの履歴を記録し、使用上限やメンテナンス上限を超えた際にはアラートが発せられる機能もあります。

またソリューションによってはロケーション別、部門別、品目別に在庫数や使用状況をリアルタイムに確認できるため、どの金型をどの発注先に貸し出したかわからなくなるといった問題も解消されるでしょう。

自社および発注先の使用実績や移動履歴を記録し、全体的な使用状況を可視化できるため、金型の所在や使用状況を一元的に把握できるため、無償保管や紛失といったリスクを軽減できます。

メリット2:管理工数の大幅な削減

金型管理システムを導入することにより、業務の効率が向上し、在庫管理業務の手間を減らせるだけでなく、在庫の状況をすぐに確認できるため製造現場の作業時間短縮にもつながります。入出庫処理にバーコードやRFIDを活用すれば、手作業による在庫カウントや台帳記入の負担も軽減されます。

とくにQRラベルと写真、位置情報を組み合わせることで、現物確認を電子証跡に置き換えられるため、棚卸の実査工数を大幅に低減できるでしょう。金型台帳・貸与・廃棄・棚卸など全工程を一元化し、業務フローを標準化することで、社内外の情報連携の効率化も期待できます。

メリット3:情報の一元管理と属人化の防止

金型管理システムを導入すると、製造に関するさまざまなデータを一元管理できるようになります。設備の稼働状況や、CAD/CAM/CAEデータといった既存システムのデータも、まとめて管理することが可能です。また現場での口頭による伝言や連絡も不要になり、情報の属人化を防ぐ効果も期待できます。

紙の台帳では情報の更新や検索がしにくい状況でしたが、デジタル化とクラウド化を組み合わせることで、金型情報を全員がリアルタイムで共有でき、情報の曖昧さも解消できます。

こうした取り組みの結果として、業務のデジタル化が加速し、情報共有や意思決定のスピードアップ、そして人為的ミスの削減も見込めるのです。

調達業務全体のDX化で金型管理を効率化する

金型保管の適正化は重要ですが、それだけでなく調達業務全体をDX化することも大切です。調達業務をDX化すれば、

  • 見積取得

  • サプライヤー管理

  • 発注業務

  • 契約管理

  • 購買データ分析

などといった調達業務全般を一元化し、業務効率を飛躍的に向上させられるでしょう。

とくに中小受託取引適正化法への対応では、価格協議のプロセス記録や契約書面の電子化が求められており、これらをシステム上で管理することで法令遵守とコスト削減を同時に実現できるでしょう。調達業務のDX化や最新の取り組み事例について学びたい方には「調達DXカンファレンス」がおすすめです。

このカンファレンスでは、「原価低減目標達成に向けたサプライヤー様とのコミュニケーション術」「間接材調達の脱属人化」など、調達部門の実践的なノウハウが紹介されます。金型管理を起点として、調達業務全体を見直しましょう。

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まとめ

2026年1月に改正・施行された取適法により、1年以上発注のない金型を無償で保管させ続けると、「不当な経済上の利益の提供要請」として違法になるリスクがあります。調達購買部門では、所有権の明確化や保管費用の適切な支払い、廃棄プロセスの整備といった対応が急務です。

金型台帳をシステムで一元管理すれば、棚卸工数の削減や情報の属人化を防ぎ、業務負担を大きく減らせます。見積・発注・サプライヤー管理を含む調達業務全体をDX化することで、法令遵守とコスト削減を同時に達成できるでしょう。

また2026年1月1日から「中小受託取引適正化法」が施行されました。金型保管以外にも、調達購買部門としての対応すべきポイントや注意点を知りたい方は、下記も参考にしてください。

関連記事:【2026年】購買調達部門向け|取適法改正対応のポイントを解説 

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