Leaner

10年後の調達をつくるDX戦略。業務の標準化で「調達をクリエイティブな仕事へ」東亜ディーケーケーが目指す持続可能な調達 

社名

東亜ディーケーケー株式会社

従業員数

連結 596名(2025年3月31日現在)

事業内容

・計測機器(環境・プロセス分析機器、科学分析機器)の製造、販売
・医療関連機器の製造、販売
・計測機器の部品・消耗品の販売
・計測機器のメンテナンス・修理
・不動産賃貸事業

課題

・調達業務の属人化と、それに伴う技術継承の限界
・「見積・交渉プロセス」がデータ化されず、組織の資産になっていない不透明性

総合計測機器メーカーとして、創業80年以上の歴史を誇る東亜ディーケーケー株式会社様。同社では、少量多品種の部品調達や属人化、ベテラン層の引退に伴う技術継承といった、製造業が直面する深刻な課題を抱えていました。

これまでの「個人の経験と記憶」に頼った調達から脱却し、10年後も持続可能な調達体制を築くために、同社はなぜリーナーを選んだのか。基幹システムとの役割分担から、DXによって生まれた現場のモチベーション変化、そして調達を「クリエイティブな仕事」へと変革させる未来の展望について、執行役員の一柳 禎志様に詳しくお話を伺いました。

■お話を伺った方
東亜ディーケーケー株式会社
執行役員 生産本部 副本部長 兼 生産技術部 部長
一柳 様


ーまず最初に御社の事業について教えてください。

当社は、「水・大気・ガス・医療」の4つの領域を柱とする、創業80年以上の歴史を持つ総合計測機器メーカーです。特に環境計測の分野で国内に強みを持ち、幅広い分野で人々の暮らしを支える製品を提供しています。

ー東亜ディーケーケー株式会社の調達部門における役割・ミッションを教えてください。

私たちが提供する製品の役割は、単に分析機器の精度や品質を追求することだけではありません。最も重要なのは、お客様が手にする「測定データ」の信頼性の担保です。そのデータが、いつ、どこで測っても正確に再現されること。これが私たちの製品に求められる絶対的な価値だと考えています。

分析機器は、短期間使って終わりというものではありません。何年、何十年と使い続けていただく中で、常に高い再現性を保ったものづくりを維持するためには、高品質な部品の安定調達が非常に重要な鍵となります。

お客様の製品品質そのものを支える立場として、「信頼性」と「安定性」を長期にわたって提供し続けることが、私たちの調達部門が担う事業の根幹であり、最大のミッションです。

サプライヤーの廃業、技術者の引退。ベテランの経験に頼れない調達状況に

ー調達DXを進めるにあたり、どのような課題があったのでしょうか。

最大の課題は、調達業務の属人化と、それに伴う業務継承の難しさでした。
かつてモノが溢れ、世の中全体が成長していた時代は、モノを作るというプロセスの中で調達は、あまり苦労していませんでした。しかし、その状況を一変させたのがコロナの時期です。

以前から「新たなサプライヤー様を開拓しなければ継続性が保てない」という危機感は抱いていましたが、コロナの時期を境に、「調達ができなくなる」現実に直面しました。

また、特注品の製造を依頼していた唯一無二のサプライヤー様の廃業、高齢者の技術者がどんどん定年を迎え、「昔の技術がわからない」という状況に加え、個人の経験に頼り切っていたため、技術を熟知した担当者がいなければ新たなサプライヤー様を探すことすらできない。こうした事態が、事業継続における現実的なリスクとなりました。

特に深刻だったのは、「どのサプライヤー様から何を買っていたか」という知識が、すべて担当者個人の頭の中にしかなかったことです。
過去の見積データベースが整備されていなかったため、当時は私のような経験を積んでいる世代が記憶を掘り起こし、覚えている昔の話を繋ぎ合わせながら、なんとか調達をするという非常に大変な経験をしました。

こうした経験から、見積情報もサプライヤー様の情報も、すべての情報・データを組織全体できっちりと共有できる仕組みが必要でした。

サプライヤーの利益確保も調達の使命、安定供給を支える「選択」できる調達への変化が重要に

ー調達部門に求められる役割は、これまでとどう変わってきたと感じられていますか?

かつては、少量生産に対応してくれる小規模なサプライヤー様に対し、標準品ではない「たくさん作れないもの」を個別に依頼することが多く「とにかく安くて入れられるところ」というのが少なからず続いていました。

しかし現在は、サプライヤー様の利益確保や供給の維持といった、より複雑になった課題にも対処しなければならない時代です。そのためには、「価格が適正であるか」だけでなく「優れた技術を持っているか」といった点を、改めて正しく整理した上で選択していくことが重要になります。
製品ごとに最適な技術や生産能力を持つサプライヤーを見極め、戦略的に「競争」と「選択」を生み出していく。そうした体制への転換が不可欠になっていると感じます。

「この機械がなければ困る」というお客様の期待に、これからもお応えし続けるために、調達は極めて重要な要素です。これからの調達を担う人たちは、蓄積されたデータを活用しながら、多様な選択肢を持って判断していくことが求められます。やはり「価格だけでない」という視点が、これからの大きなキーワードになると考えています。

「デジタル化は手段に過ぎない」——見積・交渉プロセスを組織の資産に変え、人材不足を乗り越える

ー調達DXへの取り組みを始めたきっかけを教えてください。

きっかけとなったのは「在庫管理」の見直しでした。弊社は少量多品種の部品を在庫として抱えながら製造を行っています。そのため、新しいサプライヤー様を探して部品を切り替えるだけでも多大な工数がかかり、どうしても新規開拓が後手に回ってしまい、スピード感を得ることができずにいました。

そして、弊社では海外調達品などの評価が難しい在庫を適切に削減し、効率よく回していく必要があります。しかし、少量多品種生産を行う弊社の調達にとって、在庫を減らし続けることは難しいことなので、常に最適なバランスを考えなければなりません。

こうした課題を解決すべく、当初は「基幹システムでのデータ化」を軸に検討を進めていました。ちょうどその頃、経営層からも「管理会計を基幹システムで一元化したい」という要望があり、在庫管理と融合させる形での基幹システム刷新、そしてBPR(業務プロセス再構築)に着手することになったのです。

この改革のプロセスを通じて、デジタル化はあくまで「手段」である一方、本質的な課題は「調達を担う人材や技術者の不足」にあると再認識しました。

その不足をどうカバーするかを検討した結果、まずは業務情報を徹底的にデータベース化することが不可欠であるという結論に達しました。そこで、既存の基幹システムには備わっていない「見積依頼の送信」「価格交渉」「比較」といったプロセスをデータ、資産として残せる仕組みを導入し、そこからデジタル化、DXの経験を積んでいこうという結論を出しました。

「10年後も供給を維持できるか」——目先の数字を超えた、未来への投資

ーリーナーの導入に際して、どのように投資対効果を測り、導入を決めたのでしょうか?

今回の導入における「成果」は、煩雑な業務を効率化し、浮いたリソースでこれまで手薄になっていた新しいサプライヤー様探しなど「本来やるべき仕事」にシフトすることそのものが成果だと考えています。ですから、投資対効果としてお金で返ってくるというものではありません。

ですが、10年後、私たちの調達部門がサプライヤー様との関わりを維持できていること。これが最大の評価になります。このことを明確にし、導入を決めました。

正直なところ、将来的な数字の保証など、誰にもできるものではありません。しかし、「これだけの工数が削減できる」という予測と、「その余力で、これまで着手できていなかった戦略的な業務にシフトできる」という筋道をしっかりと立てて進めました。

加えて、まずはやってみて、万が一駄目だったらやめるという選択もできます。導入のハードルが低く、撤退の判断もしやすいのはクラウドサービスの利点ですから、まずは一歩踏み出してみようという結論に至りました。

「対話」をデータ化する仕組みは基幹システムにはない。DXを実現するシステムの「役割分担」

ー基幹システムに一元化するケースも少なくない中、基幹システムとリーナー、2つのシステムで進める決断をした要因を教えてください。

実際、基幹システムへの一元化は非常に難しいというのが実情だと感じています。

費用をかけて基幹システムで完結させようとしても、検討段階で「一部の業務は外(別のシステム)でやった方がいいのではないか」という議論が起こります。しかし、最初に要求を出した手前、無理に画面を作っても、結局それではやりたいことができない。そうなると、コストの兼ね合いから「次の機会に」といった話にどうしてもなってしまいます。

やはり、導入のプロセスにおいて「どの工程が重要で、相手とどのようなやり取りがあるのか」を十分に議論し、基幹システムで対応できないのであれば「そこはアナログのままでいいのか」という話はきちんとするべきです。

業務のデータ化は不可欠ですが、サプライヤー様との細かな交渉経緯やプロセスをデータ化する仕組みは、一般的な基幹システムには備わっていません。在庫管理や原価管理ができるシステムは世の中にたくさんありますが、購買窓口でのやり取りや交渉経緯までを組織の資産として残せる仕組みは、既存の基幹システムでは十分ではありませんでした。

私たちは、真に『DX』を実現するためには、この交渉プロセスもあわせてデータ化することが不可欠だと考えました。
だからこそ、基幹システムでの一元化はできないと認識し、基幹システムにはない役割を担うものとして、別の仕組みが必要だと判断しました。

成果をデータで可視化し、メンバーが達成感を実感できる調達現場に変化

ー実際にリーナーを導入して、どのような変化を実感されていますか?

まずは「工数削減」を第一のテーマとして掲げていましたが、これは、だいぶ成果が出ています。

具体的にも相見積により、どれだけのコストインパクトがあったのか、これまでの金額との差額をデータとして可視化できるようになりました。それにより、それぞれのメンバーが「自分はこれだけの成果を出したんだ」ということを自覚できるようになり、上司もその数字を見ながら「よかったね」と声を掛け合えるような良い雰囲気が生まれています。

以前は、メール業務で手がいっぱい、というような、大変で少し退屈な単純作業が業務の多くを占めていました。そうした業務自体が効率化されて楽になっただけでなく、浮いた時間で出した数字がしっかり「成果」として見える。それによってメンバーのモチベーションが上がっていることは、非常に大きな導入効果だと感じています。

「クリエイティブな調達」へ、独自の製品づくりを支える持続可能な調達体制を目指す

ー今後どのようなステップで組織をアップデートしていきたいとお考えですか?

これまで調達業務を牽引してきたメンバーは、サプライヤー様との密なコミュニケーションを通じて膨大な情報を蓄積しており、それが重要な知見となってきたのは事実です。一方で、対人関係がプレッシャーになる担当者や、人付き合いの中で知見を得ることを苦手とする人もいます。また、購買業務においては、癒着のリスクを避けるために適宜担当を入れ替え、健全な体制を維持することも重要です。

これを実現するためには、従来の「教育によって人にすべてを覚えてもらう」というやり方だけでは限界があります。人材に余裕がある時代ならまだしも、今のように人が少ない状況では、教育に多大な時間をかけること自体が組織の大きな負担になっているからです。

だからこそ、教育をできるだけシンプルにする。これこそがDXの最大のメリットだと考えています。業務が標準化されれば、特定の個人に頼らずとも、誰もがスムーズに仕事を進められるようになるはずです。

弊社のように少量多品種の製品を扱っていると、「大量に仕入れておけば、しばらくは安心」というわけにはいきません。常に膨大な種類の部品を、少量ずつ集め続けなければならないという特殊性があります。他社には真似できない独自の製品を作るためには、それだけ多くの部品を使いこなすことが不可欠であり、そのための「間接業務」をいかに標準化していくかが鍵となります。

そうして標準化を進めることで、担当者には単なる発注作業ではなく、新しいサプライヤー様の開拓といった、よりクリエイティブな仕事で達成感を得てほしいと願っています。深刻な人材不足という課題があるからこそ、DXを手段として活用し、誰もが活躍できる調達組織を作っていきたいと考えています。

「2社購買」の実現、比較データを積み上げ、調達の質を磨き上げる

ー今後、リーナーを活用して実現したいことはありますか?

今後はサプライヤー様の「評価」という、よりシビアな領域に踏み込んでいきたいと考えています。
そのひとつが「2社購買」への対応です。複数のサプライヤー様から同じ部品を買って同時に製品に使用するということが、今の仕組みでは難しい状況にあります。

しかし、もし2社購買を仕組みとして実現できれば、どちらの品質が良いのかを比較できますし、何より有事の際の代替が非常にスムーズになります。管理の手間は増えますが、あえてそこに挑戦していきたい。リーナーはそのための重要な基盤になると考えています。

そのためには、入ってくる製品の評価もデータとして積み上げていく必要があります。リーナーを導入したことで、そうした情報を蓄積するためのベースは整いました。あとはしっかりとデータを入力し、更新し続けていく。そうしてサイクルを回していけば、先ほどお話しした「安定供給」や「戦略的な調達」のすべてに繋がっていくと確信しています。

ー最後に調達DXの先にある、真の目的とはどのようなものであるとお考えでしょうか?

新しいサプライヤー様を探すプロセスにおいて、提示された見積もりが「正解」かどうかを判断するのは非常に難しいことです。経験を積んだベテランが「これが正解だ」と言っても、他のメンバーも、あるいは経営層であっても、それが本当に正しいのかは分からない。

最適な調達というのは、単に安ければいいというものではありません。技術、品質、納期、そのすべてをうまく最適化されているサプライヤー様こそが、「良いサプライヤー様」だと言えます。しかし、その感覚の取り方が属人化されているのが実情でした。私は、これらをデータベース化することで、誰でも標準化された基準で判断できる状態を作りたいと考えています。実際に、2件、3件と相見積もりを重ねることで、その判断の精度が上がることも分かっています。

また、相場観から工数や材料費を算出すれば、そのサプライヤー様がどの程度の利益を得て成り立っているのかが見えてきます。「さらに安くするためには、図面そのものを変える必要がある」といった議論もできるようになります。サプライヤー様も適正な利益が出て、良い状態で製品や部品を作れる環境を維持しなければ、無理がたたって廃業に追い込まれてしまう。少なくとも私たちの周囲では、そうした事態が現実のものになりつつあります。

製品として最適化されたものを、安定して供給し続けられること。これこそが調達におけるDXの目的です。安定供給が途絶えることのないよう、製造に関わるあらゆる業務をデータベース化し、標準化していく。この「繋がり」を強固にすることこそが、調達において最も重要であり、私たちが目指すべき姿だと思っています。

ーありがとうございました。

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