
効率化の先にある「真の調達力」とは? 製造工程の理解から深めるオカムラの購買改革


社名
株式会社オカムラ
従業員数
6,082名[2026年3月31日現在]
事業内容
オフィス家具や店舗用什器、物流システム機器の製造・販売および空間デザイン
課題
・調達ナレッジの不保持と価格決定プロセスの不透明化
・情報の散逸に伴う確認作業の手間と業務効率の低下
・バイヤーの「原価精査力・価格交渉力」の不足
オフィス家具や商環境事業で広く知られる株式会社オカムラ。その中で産業車両用変速機の製造を担うパワートレーン事業部では、見積もり情報の点在や過去の交渉経緯のブラックボックス化による、調達業務の属人化が大きな課題となっていました。
全社的なシステム統合という理想と向き合いながら同社が導き出した解は、見積業務に特化したリーナー見積の導入でした。
単なる作業工数の削減にとどまらず、チャットやテンプレートの活用によって未経験者の教育や手戻りの削減を実現。さらにトライアルを通じて見えてきた「原価構造の精査力」という本質的な課題に対し、製造工程の深い理解とナレッジ蓄積を軸とした「適正価格での購買」の標準化に挑んでいます。同社が取り組む調達DXと人材育成のリアルに迫ります。
■お話を伺った方
株式会社オカムラ パワートレーン事業本部 パワートレーン事業部
生産管理課 課長 荒川様
生産管理課 計画・資材担当 羽田様
ーまず、事業についてと、リーナーを活用いただいている調達業務のミッションについて教えてください。
荒川様:株式会社オカムラ全体としては、オフィス家具事業が売上の約50%、店舗什器やスーパーの冷蔵ショーケースなどを扱う商環境事業が約40%、物流システム事業が約10%弱を占めています。
私たちが所属するパワートレーン事業部は、全社売上の中では全体の1%弱という事業規模です。当社のルーツはもともと航空機製造にあり、「動くものをつくる」という創業以来の想いから、自動車開発を経て産業車両用の変速機製造へと発展してきた経緯があります。
そして、私が所属する生産管理課は、工場の生産に関わる管理業務全般を統括しています。具体的には、生産ラインの計画立案をはじめ、それに向けた資材調達、原価管理、社内システム管理、損益管理まで、生産に関わるあらゆる業務を幅広く担う部門です。
羽田様:私が担当する計画・資材担当としての主なミッションは、工場の生産を止めないよう、必要な資材を必要なタイミングで安定的に確保することです。具体的には、生産計画を立て、それに基づき適正な価格や品質目標を意識しながら、取引先の選定から価格交渉、発注、納期管理、在庫管理に至るまでの一連の業務を担当しています。
─リーナーを導入する前に抱えていた課題について教えてください。
荒川様:一番の大きな課題は、調達業務におけるナレッジが蓄積されず、業務の再現性がなかった点です。
当時は見積もり情報が担当者の頭の中にしか存在しなかったり、データが各所に点在していたりして、「いつ・誰が・どのような経緯で判断したのか」という履歴が全く分からない状態でした。その結果、その場その場の判断で対応しなければならない状況が続いていました。
また、情報の管理方法にも問題がありました。見積書を「新製品立ち上げ」や「年度ごとのコストダウン活動」といったフォルダで管理していましたが、整備されておらず、結局はどこに何の情報があるのかが把握できませんでした。

さらに、価格決定の「プロセス」が見えない点も深刻でした。例えば、過去に100円と80円の見積もりから80円のものを採用したとします。それがどのような理由で選ばれ、その後どのような過程を経ていつ、現在の130円まで上がったのか、途中の経緯が一切残りません。手元に残るのは「現在130円で購入している」という事実のみで、価格変更の妥当性を判断することができませんでした。
どこに何があるか分からない状態だったため、毎月の単価決定の業務においても「他の担当者に確認しなければ分からない」という事態が常態化していました。確認を依頼された側も、その都度過去の見積書を探す必要があり時間がかかる作業でした。業務効率の悪さと、ナレッジが蓄積されない仕組み。これが当時の最も大きな課題でした。
ーリーナーの導入にあたって懸念された点や、検討上のハードルはありましたか?
荒川様:検討を進める上で、一番考えたのは発注や検収を担う既存の生産管理システムや図面管理など、社内システムとの連携をどうするかという点でした。事業部長をはじめとする上層部からも、「見積、図面、発注オーダーまでを横断的に紐付けて一元管理できるのではないか」という意見がありました。
社内全体にシステムを統一して全社横断で管理しようとする動きもあり、理論上はそれが実現できることがベストだとは思います。しかし実際には、事業部ごとに生産数量や製法、日程感が大きく異なるため、無理に一つのシステムに集約しようとすると個別最適が進まないどころか、結果的に全体最適にもならないという課題がありました。
そうした議論の中でリーナー社から提案されたのが、「無理に他の業務領域まで手を広げず、見積もり業務に徹するからこそシステムの価値が最大化される」という考え方でした。あらゆる業務領域と無理に紐付けようとするとシステムが複雑化し、かえって使い勝手が悪くなってしまいます。「手広く機能を求めるのは得策ではなく、まずは見積依頼から取得、価格精査までをこのシステム内でしっかり完結させることが重要だ」という説明には非常に納得感がありました。
その後、システム連携の議論と切り離し、生産本部から「パワートレーン事業部として個別で導入を進めて良い」という承認が得られてからは、非常にスムーズに進み、まずはトライアルからスタートしました。
ー実際にトライアルをしてみていかがでしたか?
荒川様:当初は工数削減効果なども試算していましたが、部内では「短期間のトライアルだけで劇的な効果や改善を実感するのは難しいだろう。大きな不便さや使い勝手の悪さがなければ継続して使おう」という共通認識のもとで運用を開始しました。
トライアルを進める中で、私たちの調達部門が抱える「本当の課題」が浮き彫りになってきました。それは、バイヤー個々の「価格を査定し、適切に交渉する力」の不足です。
これまでは、100円と80円の見積もりがあれば「80円の方が安いから80円で決定」と、単なる価格の比較だけで業務を終えてしまっていました。しかし本来重要なのは、「なぜその金額になるのか」「どうすれば100円の見積もりを70円に抑えられるか」「80円でも安いが、実は本来50円で作れるのではないか」といった原価構造の精査です。
適正価格を見極めた上で根拠を持って交渉する力が圧倒的に欠けていたのだと、リーナーを使い始めたことで強く実感しました。単なる業務効率化にとどまらず、部門の調達力そのものを底上げしていくための課題が明確になったと感じています。

私はもともと製品設計や生産計画の立案を担当していたため、上流から下流までの製造工程を把握しています。そのため、例えば「直径〇〇ミリの材料なら重量はこのくらいで、材料費はいくら」「1個あたりの加工時間と段取り時間を踏まえると、加工単価は何円」「そこに配送費を加味すると、全体の原価はこれくらいになるはずだ」と、適正なコストのイメージを具体的に思い描くことができます。
しかし、多くの調達担当者は、調達や日程計画といった生産活動に関わる業務に従事した経験しかないため、それぞれの製造工程から原価構造までを深く理解するには時間がかかります。結果として、受領した見積もりに対する単なる価格比較に終始してしまうことがほとんどでした。
そこで今後重要になるのが、リーナーをいかに活用してこの状況を改善していくかです。
見積を依頼する際、単に総額を求めるのではなく、材料費、加工費、配送費、外注費など、金額の内訳をいかに細かく提示してもらうかが鍵になります。そして複数社の見積もりを比較し、「同じ部品なのに、なぜA社とB社で加工費に差が出るのか」「治具の有無がどう影響しているのか」といった違いを分析する。そうした価格を精査する力を磨いていくことこそが、システム上にナレッジを蓄積して取り組むべき次のステップだと考えています。
調達において最も重要なのは、上流から下流までの工程を適切に理解し、それらを結びつけて考えることです。システム上に材料費や加工費の明細がデータとして残っていても、それは「数字の羅列」に過ぎず、何の意味もありません。その数字の背景に何が含まれているのかを想像し、比較検討を通じて「なぜこの価格になるのか」を論理的に考える力を持たなければ、購買担当者としての能力は向上していかないと考えています。
─リーナーを本格的に活用いただく中で、業務にどのような変化がありましたか?
荒川様:まず業務面において、見積もり依頼そのものの作業が劇的に効率化されました。以前はエクセルの見積依頼書に品番や工程を入力し、サプライヤーごとに書類を作成、図面を添付したうえで、CCなどの送信先にも気を配りながら個別にメールを送るという非常に手間のかかる作業を行っていましたが、今は大幅に簡素化されています。
また、案件の進捗管理や価格比較も視覚的に行えるようになり、依頼から回収、選定に至るプロセス全体の時間が短縮されました。回収できていない案件が一目でわかるほか、技術部門からの手配依頼も案件ベースでスムーズに連携できるようになっています。
羽田様:私は4月に異動してきたばかりで調達業務自体が初めてだったのですが、非常に使いやすいと感じています。メールでのやり取りだと「どの件の話だったか」が分からなくなりがちですが、リーナーでは見積もり案件ごとにチャットで会話が完結するため、経緯が明確で迷いません。
一度テンプレートを作成してしまえば、必要な項目を入力して送信先を選択するだけで依頼が完了します。文面を毎回考える必要もなく、調達の経験が浅くても迷わず作業が進められます。最近増えている、価格改定や取引先の廃業に伴う転注においても、見積もり依頼の業務自体の負担が少ないため大変助かっています。

荒川様:テンプレートに「工程」の選択項目を組み込んだことで、意図通りの教育効果も生まれています。経験が浅い担当者でも、依頼時に「このサプライヤーに依頼する工程は何か」「材料支給なのか否か」といった内容を強制的に考えざるを得ない仕組みになっているからです。伝えるべき情報が標準化されたことで、伝えるべきものがわからなければそこで調べるので知識になります。
その結果サプライヤー様から「材料はどうするのか」「前工程はどこまでやるのか」といった確認のやり取りが発生する手戻りがなくなりました。余計なやり取りが省けた分、担当者が別の業務に注力できる時間も増えています。
私たちが最終的に目指している「調達力の向上」は、さらに上流にあるテーマです。調達・生産管理・原価管理といった部門の垣根を取り払い、モノづくりの大前提である「生産工程を正しく理解する」という技術力を高めていく。そのための基盤として、今後もシステムを活用していきたいと考えています。
ー今後、リーナーを活用して実現したいことについて教えてください。
羽田様:私は、これまでメールなどで行っていた見積もり作業を完全にリーナーへ移行させることで、業務の無駄をさらに削減していきたいです。
リーナーを使えば見積もり業務をスムーズに完結させることができます。メールの文面を考えたり、過去のやり取りを探したりといった余計な時間を短縮し、そこで浮いた時間を納期調整や社内外の様々な調整業務など、私たちが注力すべき本来の仕事に充てていきたいです。
荒川様:今後実現したいことは大きく3つあります。1つ目は「ナレッジの蓄積」、2つ目は「調達担当者の力量向上」、そして3つ目が、それら2つの結果として「適正な価格でモノを買うことを部門のスタンダードにする」ということです。
私が考える「適正な価格で買う」状態とは、各担当者が自分なりに価格を精査・比較し、「なぜこの価格になるのか」を理屈をつけて説明できる状態を指します。担当者が明確な根拠を持って提示し、購買の責任者が余計な差し戻しや確認のやり取りをすることなく、スムーズに承認できる状態が理想です。
リーナーを活用することで、私たちオカムラの調達担当者が「金額の妥当性を判断するための材料」を、簡単かつ分かりやすく、そして便利に収集できる仕組みを定着させていきたいと考えています。