
「昔からそうだった」購買を変えた、KMバイオロジクスの現場目線の購買改革


社名
KMバイオロジクス株式会社
従業員数
2,032人(2025年6月)
事業内容
ヒト用ワクチン、血漿分画製剤の研究・開発・製造・供給 / 動物用ワクチンの製造 / 新生児マススクリーニング
課題
・購買フローが煩雑で非効率、ユーザー利便性が低かった
・購買システムのメンテナンス負荷が大きかった
KMバイオロジクス株式会社はヒト用ワクチン、血漿分画製剤の研究・開発・製造・供給、動物用ワクチンの製造、新生児マススクリーニング事業を展開する企業です。
同社の間接材購買改革においてリーナーが活用されています。リーナー導入前の課題、改革の進め方と成果、今後の取り組みまで詳しくお話しを伺いました。
■お話しを伺った方
KMバイオロジクス株式会社
生産本部 SCM部 調達課 池田 様
ーはじめに御社の事業内容と池田様の役割について教えてください。
弊社は2018年に設立された株式会社明治のグループ企業で、医薬品事業を展開しています。主な事業は、人用ワクチン、血漿分画製剤、動物用ワクチンの製造・販売です。また、新生児の血液検査を行う新生児マススクリーニングという特殊な事業も手掛けており、これら4つの事業を柱に事業活動を行っています。
私が所属するSCM部調達課は、全社の購買業務を担っています。生産本部内の組織ですが、その担当範囲は製造部門に限らず、営業部門、研究開発部門、コーポレート部門など、社内の全部署の購買を統括しています。そのため、原材料などの直接材から、各部署で必要となる間接材まで、幅広く取り扱っています。
ー調達課の中での池田様の具体的な業務について教えてください。
池田様:私は2004年にKMバイオロジクスの前身の会社に入社し、営業や事業推進業務を経験した後、2022年から現在の調達業務を担当しています。SCM部調達課に所属してまだ日が浅いですが、サプライヤー様との契約締結や、今回導入した「リーナー購買」のシステム運営、電子帳簿保存法への対応も担当しています。また、原材料だけでなく、会社のインフラに関わる調達も行っています。
購買に関する業務では「リーナー購買」の導入と並行して、全社的な購買体制の整備・見直しも担当しました。これには購買管理規程の制定や、それに伴う体制の見直しといった業務も含まれており、会社全体の購買のあり方を考える重要なプロジェクトでした。
ー今回、購買システムの刷新とルールの見直しに至った背景には、どのような課題があったのでしょうか。
調達部門は納期管理や価格交渉といった、より専門性が高く、事業貢献に直結する業務に注力すべきだと考えていました。しかし、実際は現場からの依頼に基づく代理発注の業務に多くの工数が割かれてしまい、本来やりたい業務に集中できないという課題がありました。
また弊社では従来、発注方法が大きく2種類ありました。一つはワークフローシステムを使った代理発注、もう一つは以前から導入していた購買システムでの発注です。それぞれに問題を抱えていました。
ー具体的に、それぞれどのような問題があったのですか。
まず、ワークフローシステムを通じた代理発注では、現場からテキスト情報のみで依頼が届くため、価格や商品の詳細が不明確なケースが多々ありました。調達課の担当者からすると実物のイメージが湧きにくく、発注を確定させるまでに何度も確認のやり取りが発生し、双方にとって非効率でした。ユーザー目線で言えば、申請作業そのものにストレスを感じる状態だったと思います。
もう一方の購買システムですが、こちらは当初、消耗品の中でもステーショナリーなど、ごく限られた範囲でしか利用できないルールで運用していました。さらに、そのシステムで購入できる物品であっても、ワークフロー経由での購入と価格を比較して安い方を選ぶというルールがあったため、ユーザーの利便性を上げるために導入したはずが、かえって業務を複雑にし、結果的に調達課に業務が戻ってきてしまうという事態を招いていました。そもそものルール作りがユーザーを迷わせる運用になっていたことが大きな問題でした。
ー管理するという視点で感じられる負担はありましたか?
ワークフローは、極端に言えば鉛筆1本から建屋まで、あらゆるものを扱うため非常に煩雑ですし、発注までにやり取りや修正の対応が発生し、ユーザーの希望を汲み取ることが難しく、時間もかかるという課題がありました。
一方、旧購買システムはユーザー側からすると購入できるものが限られていたことが非常に大きな課題ですし、管理者側としてはマスターメンテナンスの負担が非常に大きいという課題がありました。
特に、年に一度の組織改編の際には膨大なメンテナンス工数が発生していました。人事異動の時期は、新しい部署の環境整備のために発注依頼が立て込むのですが、メンテナンスが完了するまで購入の案内ができず、現場の要望に迅速に応えられないという問題も抱えていました。
ー購買課題の解決に、なぜ「リーナー購買」を導入されたのでしょうか?
購買改革における目的は、ガバナンスは維持した上で、ユーザーの利便性を最大限に高めることでした。単にシステムを入れ替えることではなく、購買に関するあらゆるルールを見直し、業務を分かりやすく、スムーズにする仕組みを構築する必要がありました。システム導入は、あくまでその目的を達成するための「手段」だと考えています。
その上で、その手段として「リーナー購買」が弊社にとって最適だと判断した理由は、複数のECサイトと連携できる点です。製造、研究開発、コーポレートなど、部署ごとに必要とする物品は全く異なります。
日々新しい製品が登場する中で、それら全てを自社でカタログ化するのは実現できる範囲を超えています。そこで「リーナー購買」を通じて、ユーザー自身が欲しいものをすぐに複数のECサイトから探せる環境を構築できることは、非常に大きなメリットだと感じました。
また、間接材購買は品目数が膨大である一方、一つひとつの購入金額は比較的小さいため、価格交渉をしてもなかなかコスト削減において大きな成果が出にくい領域です。こうした領域において、業務の手間をかけずに、かつ購買統制、つまりガバナンスをしっかりと効かせられる状態を実現できる点が、導入の決め手となりました。
ー具体的にどのように購買フローを変更されたか教えてください。
今回の変更のポイントは、発注経路の明確化です。これまで、一部の消耗品を除く全ての発注が調達課経由になっていましたが、今回の見直しで、原材料、固定資産、および金額の大きい稟議案件はこれまで通り調達課から発注することとしました。一方で、それ以外のものは、リーナーでの購買としました。
あいまいな状態を排除し、品目ごとに明確に購買フローを明確に区分けしたのが今回の重要な点だと考えています。
ー購買改革を行う上で、大変だったことはありますか?
新たなルールを整備するために、今あるルールの意図・目的を紐解くことが大変でした。
例えば、「この商品は特定の購買システムから買ってはいけない」というルールが存在します。その理由を掘り下げると、多岐にわたりました。
もちろん適切な理由もありますが、多くは運用を工夫すれば購入可能なのに、不必要に厳しく規制されているケースもありました。さらに、そうしたルールの背景や経緯を知る人が各部署に分散しており、情報が一元化されていないため、ルール変更の際にはまず「古文書」を読み解くように過去を遡る必要がありました。
最も困ったのは、「なぜこうなっているのですか?」と尋ねると「昔からそうだった」という回答が非常に多かったことです。これらのルールは、当時としては実態に合っていたかもしれませんが、現状では合わなくなっていたり、形骸化していたりすることもあります。これらが、せっかく変更した新しい仕組みの浸透を妨げる障壁にもなりかねません。
しかし、だからと言ってルールを急に大きく変えようとすると、現場ではアレルギー反応が起きることもあります。そのため、丁寧に過去の経緯を紐解き、ユーザーに対してはなるべく分かりやすいように、関係各所への説明や調整に力を注ぎました。
このルール整備には想定よりも長い期間、半年を要しましたが、結果的にこの丁寧な進め方が購買改革を成功させる大きな要因であったと感じています。
ー導入後、ユーザーへの浸透はスムーズに進みましたか。
池田様:「リーナー購買」は2024年の11月末から運用を開始しました。当初は混乱を避けるために旧購買システムと併用する期間を設けたのですが、導入初月から間接材購買の約7割が「リーナー購買」で行われ、非常にスムーズに現場に受け入れられたと感じています。導入2ヶ月目からは完全に一本化しましたが、特に大きな問題は発生していません。
ーリーナー活用後、業務の変化や感じられている成果はありますか?
コスト削減、管理者の作業工数削減の効果がでました。また、購入可能な商品数が広がり、ユーザーの利便性が上がり、ガバナンスの強化にも繋がっているなど網羅的に購買業務を最適化できました。
そして、この改革が評価され、社内の改善提案制度では最高賞をいただくことができました。
―最後に、今回の改革を踏まえ、調達部門として将来的にどのようなことに取り組んでいきたいか、展望をお聞かせください。
今回の取り組みによって、念願だった工数削減を実現することができました。この捻出できた時間を使って、これまでなかなか着手できなかった、より戦略的な業務に取り組んでいきたいです。具体的には、直接材の価格交渉の強化がその一つです。
また、コロナ禍では海外からの物品供給が滞るという事態を経験しました。この教訓から、調達リスクをいかに回避していくかという視点も重要だと考えています。特定のサプライヤーに依存するのではなく、代替手段の確保や複線化といったBCPの観点からも、調達のあり方を強化していきたいです。引き続き「リーナー」のサービスも活用しながら、より強く、戦略的な調達部門を目指していきたいと考えています。