「お客様が必要とする情報インフラを提供する」をミッションに掲げ、情報ネットワーク機器製造の国内におけるパイオニアとして業界をリードしている、APRESIA Systems株式会社。1980年代から事業を開始し、“国産初“の機能を多数開発してきました。
そんなAPRESIA Systems株式会社の調達を支えるのが、資材部です。特に、同社の製品製造に欠かせないのが「半導体」。昨今、世界的な供給不足が深刻な問題となっており、同社でもさまざまな工夫を講じ、対応しているそうです。
この問題にいかに対処し、サプライチェーンを支えているか。また、原価が高騰する状況下で、会社としていかに収益性を高めているか。ーー企画本部の力石さん・鈴木さん、調達本部の馬籠さん・斉藤さんに、Leaner見積導入の背景とともに、お話を伺いました。
需要予測をもとに、部門横断の“ONE TEAM”で調達する
ーまずは、APRESIA Systemsさんの事業について教えてください。
力石:当社は、日立グループのいち事業部門という形で、情報ネットワーク機器の製造事業をスタートしています。その後、2016年の12月に、日立金属株式会社からカーブアウトする形で、1つの会社になりました。
主に、サービスプロバイダ様やデータセンターを保有する企業様向けなどにスイッチや伝送装置を製造・販売しています。自社では製造ラインを持たず、製造委託という形でお客様に製品をお届けしていますね。
ー御社では、お客様のニーズに対して、どのようなプロセスで調達が行われているのでしょうか。
斉藤:まず、営業がお客様からのニーズを「需要予測」としてとりまとめ、それを生産管理部に伝達します。生産管理部は、これをもとに生産計画をつくり、資材部に発注依頼をします。資材部は依頼に基づいて発注し、生産管理部と共同で在庫を適切に保ちながら購入を行っていくわけです。
資材部内では、”調達するもの”ーー主に部材と製造委託品で、それぞれ担当が分かれています。また、設備関連ーー完成品が品質基準を満たしているかを確認する測定器や設備、ソフト外注といったところは、私が担当しています。
製造委託品の中でも、国内と海外で担当を分けていたりと、専門性が求められる領域ごとに、担当者が配置されていますね。それぞれが専門性を高めて業務に当たることはもちろんですが、営業や生産管理といった他部門と連携して、いかに需要に合わせた調達を行うかが重要なんです。
ー需要予測をもとに、製造委託でものをつくられていると。
力石:おっしゃる通りです。納期のリードタイムは2ヶ月程度であることが多いのですが、オーダーが入ってからこれを1からつくり始めたのでは、とても間に合いません。
特に、私たちの製品製造に欠かせない半導体は、いま世界的な供給不足です。調達に1年近くかかることもあり、これを待っていてはお客様のニーズにお応えできません。したがって、需要予測に基づいて”いかに製造と在庫のバランスをとるか”が重要になってくるんです。
お客様の需要情報をなるべく早くつかみ、ご注文をいただいた際にはあらかじめ用意された在庫から1週間〜1ヶ月後にご提供できる。そういった体制をつくっています。
コントロールできない市況を嘆くより、できることにフォーカスする
ー世界的に半導体不足が深刻です。APRESIA Systemsさんではどのように対応されているのでしょうか。
斉藤:まず、納期の観点でいえば、需要予測に基づいて先々の必要量をできるかぎり確保するよう取り組んでいます。市場在庫を含めてかき集めているのが現状だと思います。

ですので、やはり需要予測の情報がとても重要になってくるんです。最新の情報ーー営業部門の案件や顧客との取引などを関係部門が見られるように、自社ツールも開発しました。営業や設計、生産管理など、部門をまたいだ会議も頻繁に行うことで、情報共有を徹底していますね。
ー価格の観点では、いかがでしょうか。
斉藤:市場環境がこれだけ厳しいですから、一定の値上げは避けられないと考えています。
その中でも、発注をできるかぎりまとめることで、値上げ幅を小さくする・値上げ時期を遅らせるといった交渉は行っています。
力石:半導体不足のような市場環境の変化は、私たちでコントロールすることができません。厳しい市場環境を嘆くよりも、企業として持続的に利益を生み出すしくみを考えることのほうが、建設的でしょう。
たとえば、部品以外の調達品ーー設備や備品、消耗品は、努力次第で価格低減を実現することができます。部材の値上がり傾向は避けられないので、こういったところからいかにコストダウンを実現できるかが重要だと考えています。

ー部材以外の調達で、いかに効率的に価格低減を図るかが、利益確保のカギになるということですね。
斉藤:その通りです。ただ、闇雲に安くすればいいということではないと考えています。相見積もりを効率的に取得することで、適切な競争環境をつくり、取引先様の得意・不得意を見極めた上で発注を決めていくべきでしょう。取引先様との関係性もあります。
また、それだけではなく、例えば新しい製品に使用する測定器などの場合は、”仕様の詰め”も重要になってきます。余分な仕様を削り、いかに身の丈に合った、必要最低限の仕様に絞り込むか。こういった取り組みを通じて、極力安価に調達ができるような努力を行っているところです。
デジタル化で“作業”をへらし、付加価値の高い”仕事”に集中する
ー御社では、設備品を中心とした調達を効率化するために「Leaner見積」を活用いただいています。
斉藤:おっしゃる通りです。設備といっても幅は広く、製品品質を確認するための測定器から、机や椅子のような備品もあります。これらを購入する際に、Leaner見積で相見積もりを行い、競争環境を創出することで、できるだけ安価に調達することを目指しています。
ー導入メリットは感じていただけていますか?
斉藤:メリットは実感しています。特に、見積依頼から発注先を選ぶ工程を効率化することができました。

たとえば、取引先や担当者の情報を登録しておくことができることや、それを引用して複数社に一括で見積依頼を送ることができる点。これまでは、別々に同じようなメールを作成して、それぞれの取引先に配信する必要がありました。Leaner見積の場合はその必要がなく、とても便利です。
また、取引先とのコミュニケーションも大きく改善できました。これまではメールフォルダから以前のやりとりを探し、そのメールを引用して連絡をしていました。Leaner見積はチャット方式ですので、非常にスマート・スムーズに取引先とのやりとりができます。
ーデジタル化することで、“作業”を効率化することができているんですね。
斉藤:その通りです。本来やりたいのは、仕様を細かく詰めたり、発注先を比較検討したりといった、より付加価値の高い”仕事”です。
見積結果の一覧比較にしても、エクセルで横比較表をつくったりフォルダに格納したりといった“作業”がどうしても発生するものです。Leaner見積の場合は一覧で確認でき、データも一元化されるので、検討にしっかりと時間を使うことができます。その点はメリットに感じていますね。
ーLeaner見積活用の、具体的なエピソードなどあれば、ぜひ聞かせてください。
斉藤:まだ使い始めたばかりの頃、「20ギガポート コストコンプライアンスボード」というものを、Leaner見積を通じて発注しました。
これは、かんたんにいうと弊社の製品を評価するための基板なのですが、当初は測定器メーカーのオプションがあったので、取引実績のあるところに見積をお願いしたんです。そうしたら、オプション単体では販売ができないと、断られてしまって。
どうしようかと思ったときに、Leaner見積でいくつかの企業を指定し、相見積もりをお願いしました。結果として3社から見積回答いただき、コミュニケーションがスムーズにできたこともあって、かなりリーズナブルに買うことができましたね。当初の予算よりも抑えることができて、ありがたかったです。
正直に申し上げると、はじめは「どうかな?」と思っていたんです。ちゃんと見積が返ってくるのかな、と。この出来事が、しっかり使ってみようと思うきっかけになりましたね。
デジタル化を通じて、市況に左右されない“強い調達”を
ーこれからLeaner見積を活用して、どのような調達を目指していかれるのでしょうか。
斉藤:いまはとにかく、デジタルでの見積実績を積み上げていくことが重要だと思っています。そうすることで自然とデータが溜まっていき、「市況変化による価格変遷を加味した価格査定」など、やりたいことも出てくるかなと思っています。今は設備品が中心ですが、いずれ活用範囲も広げていきたいですね。

力石:Leaner見積は、だれでも使いやすいツールに設計していただいていますよね。これを活かして、色々な人がサービスにログインし、見積案件の内容や進捗を確認できる”情報プラットフォーム”にもなるといいなと思っています。
例えば、担当者の上長が相見積もり交渉の進捗を見て、交渉に参加するとか。情報にアクセスできれば、そういった動きも期待できるでしょう。
ー最後に、Leaner社に期待したいことがあれば、ぜひお聞かせください。
鈴木:市場動向に対応していくために、過去のデータはもちろんのこと、未来の予測データなども参照できるようになるといいですね。それ以外にも、ユーザー・サプライヤーともに多くの企業と取引をされるLeanerさんだからこそ持ち得る情報を、ぜひ提供していただきたいです。
力石:すぐには難しいこともあるかもしれませんが、Leanerさんの今後の展望も伺いながら、ぜひ引き続き議論させてください。
取材・文・編集=鈴木貴丸